ガス溶接技能講習の取り方|学科8時間+実技5時間・2日間の例
ガスの炎で金属を溶接・溶断・加熱する仕事には「ガス溶接技能講習」の修了が必要です。学科8時間・実技5時間と修了試験の中身、東京で2日間・19,030円の例、アーク溶接特別教育との違いまで、国の法令と講習機関の公式情報で整理しました。
学科8時間+実技5時間
ガス溶接技能講習の取り方
AT A GLANCE
ガス溶接技能講習の早見表
- 資格名
- ガス溶接技能講習
- 種類
- 技能講習(労働安全衛生法)
- 費用の目安
- 19,030円の例(東京・税込・テキスト代込み・令和8年9月1日現在)
- かかる日数
- 2日間(学科1日・実技1日)の例
- 受ける条件
- 東京労働基準協会連合会の例では受講資格は特になし
- 公式の出典
- 公式情報を確認する ↗
MONEY MAP
この仕事の月収と、費用対効果
統計の職種:金属溶接・溶断従事者(アーク溶接工・ガス溶接工などを含む職種。ガス溶接技能講習の修了者だけの平均ではありません)
月収=きまって支給する現金給与額(残業代などを含む・賞与を除く)。全体の平均との差は−4.7万円。
| この職種 | 全体 | |
|---|---|---|
| 月収(きまって支給) | 32.3万円 | 37.0万円 |
| うち基本の給与(所定内) | 27.7万円 | 34.1万円 |
| 年間の賞与など | 66.6万円 | 101.0万円 |
| 年収の目安(計算値) | 約455万円 | 約546万円 |
費用対効果
取るのにかかる費用 19,030円(東京の例)は、この職種の月収の約6%、日数にすると約1.8日分です。
出典:厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査」一般労働者・男女計・企業規模10人以上(e-Stat ↗)。年収の目安は「月収×12+賞与」で計算した値です。統計は「その職種で働く人の平均」で、資格を持つ人だけの平均ではありません。日数は1か月を30日として計算しています。
目次
「ガスで鉄を切る仕事を頼まれた。何か資格がいるの?」
「ガス溶接技能講習って、何日かかって、いくらくらい?」
「アーク溶接の特別教育を受けたけど、ガスにも使える?」
ガスの炎で金属を溶接したり切ったりする仕事には、**「ガス溶接技能講習」**の修了が必要です。国の告示で、学科と実技の中身と時間、修了試験のことが決まっています。
この記事でわかること
- ガス溶接の仕事に技能講習が必要な理由
- 修了証を受け取るまでの4ステップ
- 学科8時間・実技5時間と修了試験の中身
- 日数と費用の例(東京で2日間・19,030円)
この記事の答え
可燃性ガスと酸素を使って金属を溶接・溶断・加熱する仕事には、「ガス溶接技能講習」の修了が必要です。
国の決まりでは、学科8時間と実技5時間で、学科の科目について修了試験があります。
東京の講習機関の例では2日間、費用は19,030円(税込・テキスト代込み)です。
職場で、ガスで鉄板を切る作業をしてほしいと言われました。何から始めればいいですか?
まずは「ガス溶接技能講習」の地図を広げよう。順番に見ていくね。
ゴール:取ると何ができる?
労働安全衛生法第61条では、危ない仕事のうち国が決めたものは、免許や技能講習の修了など決まった資格を持つ人しか就けないとされています。これを「就業制限」といいます。
その仕事の一つが、労働安全衛生法施行令第20条第10号の**「可燃性ガス及び酸素を用いて行なう金属の溶接、溶断又は加熱の業務」**です。可燃性ガスは、アセチレンなどの燃えるガスのことです。
この仕事に就けるのは、労働安全衛生規則の別表第三で、次の人とされています。
- ガス溶接作業主任者免許を受けた人
- ガス溶接技能講習を修了した人
- その他、厚生労働大臣が定める人
つまり、ガス溶接技能講習を修了すると、ガスの炎を使う溶接・溶断・加熱の仕事に就けるようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式な名前 | ガス溶接技能講習 |
| 決めている法令 | 労働安全衛生法第61条・同施行令第20条第10号・労働安全衛生規則第41条(別表第三) |
| 中身を決めている告示 | ガス溶接技能講習規程(昭和47年労働省告示第110号) |
| 修了のしるし | 講習機関の修了証(東京労働基準協会連合会の例では写真入りのカード) |
技能講習は、都道府県労働局長の登録を受けた機関(登録教習機関)が行う講習です。国家試験の「免許」とは別のものです。
切るだけでも必要
「溶接はしない、鉄を切るだけ」という場合もあります。東京労働基準協会連合会の案内では、鋼材などを切断するだけの場合でも、ガス溶接技能講習の修了証が必要とされています。
法令の言葉も「溶接、溶断又は加熱」です。溶断(ようだん)は、熱で金属を切ることです。解体や設備の工事で、ガスで切る作業を頼まれたときも当てはまります。
修了証は持ち歩く
労働安全衛生法第61条第3項では、この仕事をするときは、資格を証明する書面を持っていなければならないとされています。
ガス溶接の作業をする日は、修了証を携帯しておきましょう。なくした場合の再交付は、講習を受けた機関の案内で確かめてください。
アーク溶接特別教育との違い
溶接には、電気の火花(アーク)を使うアーク溶接と、ガスの炎を使うガス溶接があります。同じ「溶接」でも、必要なものも決まり方も違います。
| くらべること | ガス溶接技能講習 | アーク溶接特別教育 |
|---|---|---|
| 使うもの | 可燃性ガスと酸素の炎 | 電気のアーク |
| 法律の上での種類 | 技能講習(就業制限) | 特別教育(会社がする教育) |
| 法令 | 安衛法第61条・施行令第20条第10号 | 安衛法第59条第3項・安衛則第36条第3号 |
| 講習の時間(国の決まり) | 学科8時間・実技5時間 | 学科11時間・実技10時間 |
| 修了試験 | あり(学科の科目について) | 告示には定めなし |
| 東京の例の日数 | 2日間 | 3日間 |
| 東京の例の費用(一般・税込) | 19,030円 | 19,910円 |
いちばん大きな違いは、修了していない人はその仕事をしてはいけないと法律で決まっている点です。特別教育は、会社が働く人に教育をする決まりです。
アーク溶接特別教育を受けていても、ガス溶接の仕事はできません。逆も同じです。両方の作業がある職場なら、両方が必要になります。アーク溶接のほうは「アーク溶接特別教育の取り方」で整理しています。
道筋:修了証を受け取るまでの4ステップ
- 職場で必要か確かめる ガスの炎で金属を溶接・溶断・加熱する仕事かどうかを確かめます。費用を誰が出すかも、先に職場に聞いておくと話が早くなります。
- 登録教習機関に申し込む 各地の労働基準協会などが講習を開いています。日程と料金は機関ごとに決まっています。
- 学科と実技を受け、修了試験を受ける 学科はガスと設備の知識と法令、実技は設備の扱いです(下の表)。学科の科目について修了試験があります。
- 修了証を受け取る 東京労働基準協会連合会の例では、修了試験に合格すると、原則として講習の修了日に修了証が交付されます。
講習の中身と時間
国の告示(ガス溶接技能講習規程 第2条)では、講習の中身と時間がこう決まっています。
| 区分 | 科目 | 主な範囲 | 時間 |
|---|---|---|---|
| 学科 | 設備の構造と扱い方の知識 | ガスと酸素の容器、導管、吹管、圧力調整器、安全装置、圧力計などの構造と扱い方 | 4時間 |
| 学科 | 可燃性ガスと酸素の知識 | ガスと酸素の性質と危険性 | 3時間 |
| 学科 | 関係法令 | 労働安全衛生法・施行令・規則の関係する条文 | 1時間 |
| 実技 | 設備の取扱い | ガスと酸素の容器、導管、吹管、圧力調整器、安全装置、圧力計などの扱い | 5時間 |
学科が合計8時間、実技が5時間で、全部で13時間です。
吹管(すいかん)は、ガスと酸素を混ぜて炎を出す道具で、「トーチ」とも呼ばれます。圧力調整器は、容器から出るガスの圧力を下げて、使いやすくする器具です。
学科でいちばん長いのは「設備の構造と扱い方」の4時間です。容器から吹管までの道具のしくみと、安全装置の役割を学びます。
「ガスと酸素の知識」の3時間では、それぞれの性質と危険性を学びます。ガス溶接は火とガスを扱う仕事なので、事故を防ぐための知識が中心です。
告示では、学科はおおむね100人以内、実技は20人以内を1つの単位として行うことになっています。
修了試験がある
告示の第3条では、修了試験を行うと決まっています。学科講習の科目について、筆記試験か口述試験で行います。
東京労働基準協会連合会の例では、学科の日の最後に修了試験が1時間あります。テキストは日本語で、修了試験も漢字を含む日本語で行うと案内されています。
試験があるんですね。ガスを触ったことがなくても受けられますか?
受ける条件は申し込み先で確かめてね。一歩ずつ行けば、ちゃんと着くよ。
東京労働基準協会連合会(安全衛生研修センター)の案内では、受講資格は「特に無し」となっています。ほかの講習機関で受ける場合は、それぞれの案内を見てください。
日数:2日間の例
東京労働基準協会連合会の安全衛生研修センターでは、学科1日・実技1日の2日間です。
| 日 | 中身 | 時間 |
|---|---|---|
| 1日目(学科) | 設備の構造と扱い方・ガスと酸素の知識・関係法令 | 4時間+3時間+1時間 |
| 1日目(学科) | 修了試験 | 1時間 |
| 2日目(実技) | 設備の取扱い | 5時間 |
修了試験に合格すると、原則として講習の修了日に、写真入りのプラスチックカードの修了証が交付されます。その日に受け取れない場合は後日郵送で、郵送料は受講者の負担と案内されています。
日程の組み方は講習機関ごとに違います。仕事を休む日を決める前に、申し込み先の日程表を見ておきましょう。
費用:19,030円の例
東京労働基準協会連合会(安全衛生研修センター)の料金表では、ガス溶接技能講習はこうなっています。
| 受講料(税込) | テキスト代(税込) | 合計(税込) |
|---|---|---|
| 18,150円 | 880円 | 19,030円 |
※令和8年9月1日現在の料金表より。テキスト代は改訂で変わることがあるとされています。受講料は講習機関ごとに決まっていて、場所によって違います。申し込み先の公式の料金表で確かめてください。
2万円くらいなら、自分で払って受けたほうがいいですか?
中の人の周りの現場では、仕事で使う資格は会社が費用を出してくれるのがふつうだよ。まずは職場に聞いてみてね。
その先の道
ガス溶接作業主任者免許
ガス溶接の次の段階として、国家試験のガス溶接作業主任者免許があります。労働安全衛生規則の別表第四では、免許を受けられる人の一つとして、次のように決まっています。
- ガス溶接技能講習を修了し、その後3年以上ガス溶接等の業務の経験がある人で、ガス溶接作業主任者免許試験に合格した人
大学や高等専門学校で溶接などの学科を卒業した人にも、別の受け方があります。受験の細かい条件は、試験を行う団体の公式の案内で確かめてください。
JIS溶接技能者(ガス溶接)
腕前を証明する資格として、日本溶接協会が行う溶接技能者の評価試験があります。
日本溶接協会の案内では、手溶接のうちガス溶接と銀ろう付の資格を受けるには、ガス溶接技能講習を修了していることが必要とされています。高校や職業訓練の機関に在学中の場合は、同じ程度の講習を受けていることが条件です。
取ったあとの仕事
ガス溶接・溶断は、金属の部品や製品をつくる工場、配管や設備の工事、解体の現場などで使われています。
国の統計(厚生労働省「一般職業紹介状況」2026年9月分)では、「製品製造・加工処理(金属製品)」の仕事のハローワークの有効求人は41,278件でした(常用・パートを含む)。
この数字はガス溶接だけの求人ではなく、金属製品をつくる仕事全体の数です。求人を探すときは、「ガス溶接」「溶断」の言葉で絞りこむと見つけやすくなります。
求人票に「ガス溶接技能講習」と書かれていたら、修了証を持っていることが求められている、または入社後に受ける前提だと読めます。どちらなのかは、応募の前に求人を出している会社に聞いて確かめましょう。
よくある質問
ガス溶接技能講習に試験はありますか?
あります。国の告示(ガス溶接技能講習規程 第3条)で、学科の科目について、筆記試験か口述試験で修了試験を行うと決まっています。東京労働基準協会連合会の例では、合格すると修了証が交付されます。
ガスで鉄を切るだけでも、この講習は必要ですか?
必要です。法令の仕事の範囲は「溶接、溶断又は加熱」で、切る作業も入ります。東京労働基準協会連合会の案内でも、鋼材などを切断するだけの場合でも修了証が必要とされています。
アーク溶接特別教育を受けていれば、ガス溶接もできますか?
できません。アーク溶接特別教育は電気のアークを使う溶接のための教育です。ガスの炎を使う仕事には、ガス溶接技能講習の修了などの資格が必要です。